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低回転率・高倍率 〜価格〜


小売価格の値付けに関しましては、最も頭を悩ませる問題ですがこれが一番重要な商売の要素です。値段設定によってショップの運命が決まってくるといって過言ではないからです。

値段設定?安くすれば、売れるだろう?
と単純に思われるかもしれませんが、そういう物販の常識が通じないのがシルバーやアクセサリーの世界。高いほうが売れる、という皮肉な結果もしばしばです。

どうしてか。
一般のお客様はアクセサリーの値段に馴染みがないのが普通です。同じ物でも千円の値札をつければ千円相当の物に思い、一万円の値札をつけるそれなりの物に思います。つまり、値段を見て千円は安いと思うと同時に安物で価値のないものだ、じゃあ要らないと思う一方で、一万円の場合は高いなあ、と思うと同時に高価なものなんだ、手に入れたいなあ、と思ったりするわけです。私はシルバーの専門なのでそれ以外の分野となるとさっぱり値段がわかりませんので、1cmのプラチナダイアモンドリングがあったとして、それが100万円より10万円、10万円より1万円の店のほうがなんとなく胡散臭く見えてしまいそうですが、100万といわれれば価値のあるものだなー、素敵だなーと感じると思います。アクセサリーというのは頻繁に消費されるものではなく、人によっては何年かに一度の買い物、好きな人でも1ヶ月に1回か数回程度の買い物です。一般のお客様はめったに買う機会のないアクセサリーの値段に疎いのは普通のことですし、値段を安く設定すると安物と思われるどころか、なんだか妖しいとかイカガワシイと思われるのも普通の感覚なのです。

アクセサリーの値段表示で二重価格は非常によく見かけますよね。「通常価格10000円のところ特別価格3800円!!!」というあれです。これはいかにアクセサリーの値段があいまいで消費者の間に浸透していないかを物語っている事例だと思います。消費者には気の毒な話ですが、アクセサリーほど二重価格が有効な商品はないかもしれません。


よく見かける例
安いなあと漠然と思われるかもしれませんが、本当に安いのかな、という疑念も残るかも?ショップと消費者の間のアクセサリー価格に対する知識の乖離が大きいため、本当にお買い得感を伝えるのはたいへんです。定価のないアクセサリーは値段設定が商売の肝。

ここまで話してくればお分かりだと思うのですが、つまりシルバーやアクセサリーにはっきりとした相場はありません(エリアの項目に述べているように地域による価格格差はおおざっぱにありますが)。相場がないということはショップが商売方針によって安売路線、高額路線、と自由に値段設定できるということです。雑誌広告などの通販ページをチェックしてみるとたまに面白いことが見えてきます。同じ商品なのに小売価格がA店4000円、B店10000円というのように開きがあったりするのです。B店は10000円で売れるからその値段をつけているわけで、決して商売を放棄しているわけではありません。パソコンがある電器屋で10万円で売られていたとします。となりの電器屋で全く同じ商品が9万円だったとします。この場合、比較されればお客様は迷わず9万円の店に流れます。4000円リングの横で同じものを10000円で売っているショップが存在するからくりは、お客様はその4000円のリングと10000円のリングがまさか同じ物だとは思わないからです。写真の撮影の仕方も違えば商品番号も違う、ショップのカラーが違ったり規模が違ったり、なにより売り値が違う、そういう状況ではもはや全く別の商品に映ってしまうのです。パソコンなどと違って、そもそもアクセサリーは全く同じ物が存在する確率は少ないですし、同じものがあったとしても価格はショップによってバラバラです。

それでは具体的に安売路線、高額路線の注意点を述べてみたいと思います。

■安売路線のワナ

先述のとおり、安くすれば売れると単純にいかないのがアクセサリー。確かに高いよりは売りやすいかもしれませんが、売上でみると伸び悩んだり・・・。世の中デフレということで、こういう時代はやっぱり安くしなくちゃ、というのは自然の考えですよね。でもアクセサリーはハンバーガーや牛丼とは全く性質が違います。あんまり昨今のデフレ価格につられてしまっては足元をすくわれかねません。ハンバーガーや牛丼のような食料品とは違って、アクセサリーはなくても日常生活に支障をきたすようなものではありません。不況の時代でも毎日消費するようなものだからこそ安売りに意味があるのであって、普段から買う機会のないようなアクセサリーは、たとえ安くても買い控えられてしまいます。「ティッシュペーパー5箱100円!」とか「コシヒカリ5キロ1000円!」のような安売りをやっていたらその場で即買いする消費者はたくさんいると思いますがシルバーリングを特売500円!とやったところで、たくさん売れるとは考えられません。ティッシュや米は生活に必要なものなので、いつもより安く売っていたらお買い得セールを逃すまいとする心理が働きますが、ある特定のリングが安売りされていても自分が良いと思うデザインでなければいくら安くても買いません。しかもほとんどの消費者はそのシルバーリングが500円でも安いのか高いのかよくわからないのが現状でしょうし、ひょっとしたらその程度の安物なんだろう、ぐらいに思われるかもしれないのです。つまりアクセサリーは安いから買うという商品ではなく、デザインや形が気に入って買う商品です。そこで逃したらもう一生手に入らないかもしれないと思うのがアクセサリーです。ほかの店で売っているとも限りませんし、また同じものがあったとしても、先述のように値段などが違っていれば同じものだと思わないのがアクセサリーなのです。

それから安売りは価格競争という脅威がついて回ります。激安!とか他店よりも安くします!などと謳ってしまうことは価格競争という土俵で勝負しますと宣言するようなものです。どういうことかというと・・・
大阪でシルバーアクセサリーの商売をしているあるイスラエル人と話したことがあります。彼いわく、周りのショップは潰れていったが、自分のショップは生き残った。なぜなら自分は激安価格競争を無視して高く売り続けたからだ、と豪語していました。私は大阪に行ったことがないので確かめようもないのですが、その話もあながち誇張とは言えません。東京の原宿にテント村という小さなテナント集合モールがあって、以前、そこで私自身も価格競争を目の当たりにし、私の友人を含め、多くの業者が廃業に追い込まれたのを知っています。話しを戻しますと、大阪のイスラエル人の戦略はこうです。同じ商品でも隣の店で2000円で売っていたら自分の店では5000円、6000円にする、そうすればお客様はまさか同じ商品だとは思わない。もし2000円に対抗して1900円にすれば同じ商品とみなされてしまう、だったら安いほうで買おうということになり、ショップ側は延々と価格破壊を続ける・・・これではショップが潰れてしまいます。
私自身の経験でも数年前フリマに出店し、シルバーアクセサリー全部1000円のような無謀な価格競争に走ってしまったことがあるのですが、そうなってしまうともうほとんどボランティアというか、冷静に考えれば商売とは言えない状態でした。価格競争を追求しても利益を追求しなければ商売は継続することができません。

さらに言えることはもともとアクセサリーは安売りに向いていません。どういうことかと言うと、アクセサリーはほかの物販業に比べると回転率がものすごく悪いです。言い換えればめったに売れない消費カテゴリなのです。普通に生活している人の消費活動に順序をつけるとしたら、まず食料品、その次に身の回りの日用雑貨、その次に衣服類、そして最後に・・・アクセサリーですよね。食料品は毎日でも買うかもしれない、日用雑貨はその次、衣服もシーズンごとに買い換えるかもしれないけれど、アクセサリーは1年買わなくても問題なし。だから、食料品を扱うスーパーなどは毎日当たり前のように仕入れがあって商品が目まぐるしく回転しますが、それと比較するとめったに消費されないアクセサリーの場合は商品を仕入れて、売って、という回転率がものすごく低いのです。回転率が低ければ薄利多売は商売として成り立ちません。こういう状況では、いかに多く売りさばくかを考えても、お客様の人数はだいたい決まっていますので、いかに1つの商品で利益を出すかということを優先させる方が現実的です。

■高額路線の注意点

高額路線のほうは特に難しいことはないと思います。ただしこの不況下に強気の値段設定は勇気が要ることですし、一歩間違えればほとんど売れないという事態になりかねません。ディスプレーの仕方や店舗の内外装、店員の風格、態度、専門知識、ロケーションなどによって、値段相応の商品に見えるのであって、ただ高いだけではお客様が納得しません。ラッピングなどのギフト対応や細かいサービス、買った後のアフターサービスなど充実させられるところは手を抜かない心構えが必要です。


左と右、どちらの方が高価に見えますか?同じ商品を同じカメラで撮影しても結構違いがありますよね。”見せ方”って重要です。特にネットは。一方、実店舗はトータルな演出力がものをいいそうです。

値段設定に関しては一番頭を悩ませる問題だと思います。
街の近隣のショップをリサーチしてみるのも良いですし、今はネットを使えばでいくらでもネット通販店やオークションでの価格を調べることが可能です。そこでリサーチした価格をすべて真に受けて対抗しようとするのではなく、参考程度にとどめ、いろいろな条件を考慮して自分のショップに合った値段設定を目指せば良いと思います。


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